姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―



「母様には、あなたに自由を与えることができません。」


ハッキリと言い切る細いのに芯の通った母親の声。
「どうして」と聞かずとも、母親は粛々と話を続けた。

「これは、お父様と母様があなた……
“広瀬家の跡取りであるあなた”に必要な教育であると決めてやっていることだからです。」

毅然とした態度、意志の強い目。
疑問はどうしても消えないが、子どもでもそれは覆らないことなのだということは判る。

「……わかりました。」

下を向き釈然としない気持ちを隠しながら、口先だけで返事をする。
そんな俺を見て、母親は俺の頬をそっと手のひらで掬った。

「許してね、真。決められた道を歩くことは変えられない。

でも、あなたを優しく真っ直ぐ歩けるように導くことはしていきたい。
自分の意思で進んでいけるような強く優しい子になってね。」


“広瀬の妻”と“真の母親”が行ったり来たり。
母親の温もりと愛情を感じながら、俺はこんなことを思う。


「ああこの人も、広瀬に自分を奪われたんだ」って。