姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―


「真くん、僕とあっちで話さない?」

自己紹介を終えた後、聖はそう言って俺を会場の外に誘った。

人気のないロビーの階段横の一角。
来たはいいけど、俺は何を話せばいいかもわからずもじもじと後ろで組んだ手を動かしている。

「急に誘ってごめんね!真くんと話してみたくて。
小学校はどこなの?クラスは?」

「あ、えっと……桃林学園……4年1組……」

「桃林!?すごい名門。何するのが好き?休みの日は何してるの?」

「好きなこと…、あ、えと、休みの日は習い事……」

言いかけて失敗したとハッとする。

「休みなく習い事」と言うと大抵「へぇ、流石広瀬家の子だね」とまるで俺が嫌味でも言ったかのような反応をされてしまうからだ。

「習い事!?ずっと?一日中!?」

「あ、……うん。…でもたまに休んだりも」

「へぇ、すごいなぁ。僕なんてさぁ……」

(……あれ、嫌な顔されなかった。
それに今褒められた?)

じわっと広がる安堵と嬉しさに口元が緩みそうになるのを我慢する。

何気ない話題を延々喋り続ける聖との時間は、俺にとって楽しみな時間になっていった。


――まぁ数年後、急に無視されるようになるんだけど。