母親が望む道を行くのが最善。
高校がイレギュラーだっただけ。
『でも俺は、敷かれたレールを歩くことになるとしてもちゃんと納得して、自分らしく歩きたいと思ってる。』
『アンタは近江涼じゃなくて、近江涼介なんだから。
一緒に探そう。好きも嫌いも、嬉しいも悲しいも全部。』
“涼”でい続けるなら、平和を望むなら。
何をするのが最良かわかっているのに、真と姫の言葉を頭の中で繰り返し思い出している。
『人間の心理?的なの得意分野でしょ?近江涼介の。』
俺の得意ってなんだろう?
大学に行ってまで学ぶほど、得意なこと・好きなこと・興味のあることって?
胸の奥がじわりと熱くなった。
これは期待なのか、恐怖なのか、それさえもわからない。
「そういえば!来月は修学旅行よねぇ〜。
イベント目白押しで2年生は楽しくていいわね!」
進学の件を自己完結させて、母親の話題はもう別のことに移っている。
“涼”でいなければならない狭い空間で、そうあるべきと思うのに相反して。
涼介の元に戻されたたった一枚の紙切れに無限の可能性が広がっているような気がしていた。



