―――同時刻、近江涼介宅リビングにて
「涼ちゃん!見たわよぉ机の上!進路希望調査表!
もう、どうしてこんな大切なものすぐ出さないの!」
帰宅後すぐに勉強机に置いておいたものを見られたらしい。
母親は怒った顔を作りプリントを眺めた。
「締め切り……は、明後日じゃない!
ほんとこの子は、もう〜!」
「――あー、ごめん。忘れてた。」
“涼”の誤魔化し笑いに絆されて怒りは継続しない。
つくづく息子に甘い母親だ。
「進学……はするわよねぇ。行けるかは別として……。
できれば高校受験みたいに奇跡的に家から通える公立に受かればいいんだけど。」
無理だと思いたいのだろう。
「実家暮らしなら私立でもいいかしら?」
と父親を窺い見る。
母親最優先の父親は、穏やかな笑顔で頷くのみだ。



