姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―


「ま、1番は藤澤ちゃんにまた被害が出ないようになんだけどぉ」


榛名聖がにっこりと笑みを深めて、近江涼介に意味深な視線を送りながらその肩をポンと叩く。

それに頷くように近江涼介は淡白なのに射抜くような真っ直ぐな目で私を見た。


「窮地に追い込まれれば、少しは人を頼るようになるだろ?」


近づいてきた近江涼介が、小さい子を褒めるみたいに私の髪をかき乱す。


「ちゃんと“助けて”って言えたな。」

胸がポッとあったかくなる。

榛名聖は目を細めて優しく笑っていて、
広瀬真も「しょうがない奴」とでも言いたげに私を見ている。


『何人かかってこようと、1人でぶっ飛ばしてやるし』


――そんな風にイキがった私を諫めたの?

今まで誰も助けてくれなかったから、頼ることもなかったから……
人を頼ってもいいんだよって、教えてくれたの?

目も鼻も耳も、全ての感覚が開いていく。
世界がひっくり返ったみたいな衝撃だ。


――ふっと視界が暗転して、星が瞬く世界が閉じていく。
遠くで金髪と榛名聖の慌てる声が聞こえた。


そう言えば私、昨日から一睡もしてないんだった……。


心が解れて温かくなる心地よさに、私はその後朝まで爆睡したのだった。

3人のうち誰かが先生に話をして私の家に連絡を入れてもらったようで、目が覚めたら自室のベッドの上だった。


復讐のための道具だと思ってたH2Oは、
こうして“私の友達”になったのでした。