姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―


「HEROsって不良いっぱい出てくる漫画よね!
兄ちゃんが読んでた雑誌で見たことある。

あー、だから言葉遣いとかも荒っぽいのか、納得。」

今度は姫が1人でうんうんと頷き始める。

そこで我に返って動揺してしまった。

「お前反応おかしいだろ……。
ぜってーバカにしてくると思ったのに……」


「バカに?なんで?しないわよ。
広瀬真が自分を変えようと思ってやったことでしょ?」

目を見て、真っ直ぐ。
当たり前の様に出てきた言葉。

流れ星が落ちてきたかの様な衝撃。
――それが真の胸を貫いた。


「見た目にしても言動にしても、変えるのって結構労力も勇気もいるじゃない?」

下を向いているから伏し目がちの姫の微笑みは、いつもよりずっと大人びて見える。


「理想の自分になるために、広瀬真はすっごく努力したのね。」


ドクン、ドクン。心臓の音が大きくなる。
この気持ちはなんだろう?

「?」

「……はい、完成♡」

自分の胸にそっと手を当てているうちに、姫の手も顔も離れていく。

次いで目の前に大きめの鏡を掲げられて、変身した自分の顔に遮られ姫の姿は見えなくなった。

「はー、私としたことがすっごい美少女生み出しちゃった!私の次にだけど♡

じゃあね、真く……マコちゃん♡組織票なんて黙らせて絶対優勝しなさいよ!」

パン、と眼前で鏡の蓋を閉じられたのでハッと我に返る。

その頃には颯爽とメイク道具を片付け、姫はあっという間に走り去っていってしまった。