姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―

「せっかくひーちゃんのために仕事とってあげたのに残念だったね〜、涼ちゃん⭐︎」

ポスターに文字を書きながら、聖が緩く微笑みながら言った。
姫と違ってこいつの表情はいつでも胡散臭い。微笑んでいる時は大体何か腹の底で抱えている時だ。
今だって、俺の反応を伺って探りを入れている。

「1番向かない仕事だったけどな。」

聖には嘘や誤魔化しは使わないほうがいい。余計な勘ぐりをされる。
かと言って姫や真みたいに素直すぎるのも面白がらせるだけだ。

「だよね〜⭐︎おっかしかったなぁ。
スパルタ完璧まーくんと才色兼備ぶりたいひーちゃんの意外な弱点。」

聖はふふ、と手を口に当てて笑いを噛み殺している。
最近の聖は年相応に心から笑っている時が増えた。

「ところで涼ちゃん。聞きたいことがあるんだけど。」

「はー、笑った」とため息をつきながら、聖がまた作り笑顔になった。

「ひーちゃんに写真が苦手って言ったの、あれ嘘でしょ?」

「核心をつきました」とでも言いたげに双眸を細め反応待ちをする聖を、俺は動じずに見つめる。
聖もそれに拍子抜けすることなく悠々と話を続ける。

「涼ちゃんてさ、なんだかんだひーちゃんのこと大事にするじゃない?
そんな涼ちゃんが、SNSの件でひーちゃんが必要以上に注目されるのが苦手だって知ってるはずなのに、自分が写真に写りたくないからってひーちゃんを人前に引っ張り出すかなぁ?って疑問なんだよねぇ。」

「ね?」とダメ押しするように言って聖は首を傾げる。
他人(ひと)の言動に整合性があるかを考えたり、真意を疑ったりするのは聖の長所であり短所だ。

(でもまぁいいか。)

聖みたいになんでも疑ってかかる奴か素直に向かってくる奴じゃないと、俺は思っていることを話さないから。

「姫を文化祭に参加させるため。
理由がないとまた“人混みがダルい”とか言い訳して旧校舎に引っ込んだままだろ。」

俺の言葉に驚いたのか、聖は目を丸くする。
そして「あー、そっか。なるほどね、うん。」と1人で頷き納得し始めた。