姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―

AM 11:00
いつもの授業風景。淡々と過ぎていく時間。
授業中ふざける奴など1人もおらず、真面目な背中が並んでいる。
そして俺も例に漏れずその1人だ。

勉強は理解(わか)る。多分得意。
でも成果を出すと母親が不機嫌になるからあまり好きじゃない。

皆同じように前を向いて、問題に向き合う間考えていることも多分一緒で。
自分だけが切り離された気持ちになる自由な時間よりは、授業中の方が居心地がいい……のだと思う。

ふと、斜め前方に座る黒髪のウェーブ髪がふわりと揺れた。
少しして後ろ頭が明確にカクンと急に力が抜けたように下を向く。

(寝てるのか。)

広瀬真(アンタ)のために勉強時間削って夜中までメイク動画見てやったんだからね!”

さっきの真との喧嘩で姫がそう言っていたのを思い出す。

(いつも1人だけ違う奴。)

1人だけ堂々と居眠りしている姿が、人の流れに抗ってでも自分の芯を通す姫の性格に似合ってて、少し面白いと思った。

AM 11:45
午前中最後の授業は、文化祭準備に充てられた。
ウチのクラスは店舗となる教室の装飾の制作。看板とか、小道具とか。

放課後の準備は姫はヒラヒラと逃げていくし、俺や真、聖が何かしようとすれば「させるわけにいかない」とよくわからない理由で断られるから今日が初めての参加。

流石に授業に出ないはできなかったらしく、姫も不服そうにしながらその場にいる。

「俺達なんか浮いてるねぇ〜何か仕事あるかなぁ?」

準備にバタバタと賑わっている教室の片隅で、俺たち4人は何をするでもなくただ立っていた。