姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―


「どぉー?いい感じ?」

榛名聖が賑やかに入室して来て、その後に近江涼介が続く。

私がそっちに気を取られた隙に、広瀬真はドタバタと勢いよく椅子ごと後退して逃げていった。

「アイラインが気にいらない。
ガッツリ引きすぎ?これ。」

「んー?どれどれ〜?」

容赦なくその後を追って榛名聖がその顔を眺める。
私もその隣に並んだ。

広瀬真は疲れたように深くため息をついて、不服そうながらも再度大人しく前を向いている。

「あー……これはアイラインの色を変えたら和らぐんじゃないかなぁ?」

榛名聖はテーブルに並べたたくさんのコスメの中から、ピンクブラウンのアイライナーを手に取って広瀬真の目元にあてがう。

「いいかもそれ。ちょっとやってみよ。」

「ね?というかこれ全部ひーちゃんの?たくさん持ってるねぇ。」

「うん。メイクの研究してた時にお小遣いかなり費やしたからね。」

「へぇー、あっこのリップ可愛いねぇ。」

「わかる?それ発色も良くてお気に入り。」

黙って座ったままの広瀬真をよそに、きゃっきゃと並んだコスメを見ながら私と榛名聖のおしゃべりに花が咲く。

「……女子トーク。」

ずっとソファに座って存在感を消していた近江涼介が、突然ボソリと呟いた。

驚いてバクバク言っている胸を抑える。
心臓に悪いから突然喋り出さないでほしい。