「いつも無表情なのも近江涼介だし、
この私を無視したり足蹴にする性格の悪さも、
無関心なフリしていざってとき絶対助けてくれるのも、
……全部、“近江涼介”だと思う!」
向かい合わせの近江涼介は、珍しくわかりやすく目を見開いている。
それで少しは響いているように感じられるから、私は畳み掛けるように話し続ける。
「“涼ちゃん”を押し付けられて傷ついたのも、
自分が傷つき続けても家族の心を守ろうとするバカみたいな優しさも――
“近江涼介”でしょ?」
思わず手を握る力が強まる。
ちゃんとわかってほしいから。
あなたは何も感じていないわけではないと。
「アンタは“近江涼”じゃなくて、“近江涼介”なんだから。
一緒に探そう。好きも嫌いも、嬉しいも悲しいも全部。」
……伝わるだろうか?
ちょっぴり自信がないけど微笑む。
大丈夫。あの場所から抜け出せなくたって、別の方法で救うから。
近江涼介はまだ驚いたような顔をしている。
握った手は力無いままで、狭い通路に2人、ただ見つめ合っている。



