「涼介の“介”の字にはね、“助ける”と言う意味があるの。
あなたに助けが、救いがありますようにって、そう言う気持ちでつけたのよ。
……お母さん達には内緒だけどね。」
俺が少し大きくなった時に、こっそり名前に込めた本当の由来も教えてくれた。
「少しでいいから両親や周囲から離れなさい」と遠くの高校への進学を勧めてくれたのも祖父母だった。
俺は母親にバレないように、本棚の片隅に収めた小説を何度も読んだ。
母親がいない時に、本に読んだ形跡を残さないように細心の注意を払って。
難しい言い回しが多かったけど、出てくる人達は皆自分の心と戦って、葛藤して、“自分”を見つけ出している。
そんな内容なんだと子供心に感じた。
「すごい」とはぼんやり思ったけど、そもそも戦う材料も葛藤するような気持ちも何もない俺には無縁の話だと思っていた。
……でも、今になって思えば心に引っかかるものがあったんだと思う。
だから高校は俺を知る人のいない離れたところに行くことに決めることができた、気がする。


