家庭内だけじゃない。学校や外の世界も同じだ。
みんなうちの事情を知っていて、友達どころか教師に至るまで俺が“近江涼”として過ごすことを黙認していた。
――もしかしたら、俺の人格に問題があるのが見てわかれば違ったのかもしれない。
でも、俺は明るく活発で、優しい少年を上手く演じられていたから何も言えなかったのだろう。
遠方に住む父方の祖父母だけは、相変わらず“俺”を見てくれた。
俺が演技をしていることにも気づいてくれて、会う度に父母に気づかれないところで俺を不憫がって気にかけてくれていた。
「涼介、たくさん本を読みなさい。読めば読むだけ、きっと心が豊かになるから……」
俺の心を育てようとしたのだろう、子どもが読むには少し難しい小説を何冊もくれた。
“涼”への贈り物としては不適だから、母親はいい顔をしていなかった。
けど、あの家を建てる時にかなり援助をしてもらっていたらしいから、文句も言えなかったのだろう。


