姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―


「俺、にんじん好きだから食べられるよ!
ハンバーグより好きだよ。」

無邪気な子どもの発言。ただそれだけ。

でも母親にとっては俺が“涼”であることの否定だ。

バン!と机を殴る音が、リビングの空気を凍らせる。

「“涼ちゃん”はにんじんが嫌いなの!!食べられないの!
1番好きな食べ物はハンバーグでしょ!?
にんじんなんて残しなさい!食べなくていい!!」

初めて見る母親がヒステリックに怒鳴って怒りで震える姿。
目を剥き歯を食いしばる形相。

驚き怯える俺の横で、父親が「落ち着いて」と弱々しく母親を宥める手を「うるさい!」と乱暴に払い除ける。


……その時初めて思った。

俺は自分を出してはいけない。
母親の言う通りにしなくてはいけない。

さもなくば穏やかで幸せな家庭は壊れてしまう、と。