俺が生まれる前、ここは普通の家族だった。
明るくてちょっと抜けている母親と、穏やかで優しい父親。
その間には、“涼”と言う名前の明るく元気な男の子。
愛情深い両親に愛され、健やかに成長したその子が10歳になる年。
母親のお腹にはもうひとつの命が宿っていた。
臨月が近づき、「早く産まれておいで」と愛おしそうに大きくなったお腹を撫でる母親。
「赤ちゃんもうすぐ生まれるんだよね?
楽しみだなぁ、俺に弟ができるなんて!」
その隣で、弟の誕生を心待ちにして男の子は照れ臭そうに笑う。
「それじゃあお母さん、いってきまーす!」
「いってらっしゃい“涼ちゃん”。気をつけてね。」
そんな絵に描いたような幸せは、一本の電話で脆く崩れ去ることになる。



