「あるでしょ。夏祭りでのことも、この家も母親も、不可解なことばっかり!
ちゃんと説明してよ!じゃないとアンタを助けられない――……」
「知られたくなかった。」
急に上体を起こした近江涼介が私を見下ろす。
熱が下がったとは言え、まだ具合が悪いのだろう。
汗で髪が濡れていて、瞳もいつもより潤んでいて顔も少しだけ赤い。
それがとても人間的で、いつもより強く感情の揺れを感じさせるから――――悲しい。
「じゃあなんでそんな辛そうな顔するのよ!苦しそうなのよ!いいから話して!
何があっても絶対失望しないし、助けるし、ちゃんと受け止めるから――……!」
私の感情が先に爆発してしまって、声を張り上げたせいで息切れする。
広瀬真にブチギレるなと釘を刺されたのにやってしまった。
でもしょうがないじゃないか。
頑なすぎる近江涼介が悪い。
怒りなのか悲しみなのか、グチャグチャの感情で顔を顰める。
近江涼介はそんな私をじっと見つめ、そしてそっと頭を撫でて口を開く。
数秒の沈黙が落ちる。
まるで何か重いものが落下する直前のように。
「……長くなるけど聞いてくれるか?」
私の髪を乱すその手は、いつもの優しい動き。
「くだらない俺の身の上話。」
近江涼介の心の扉が、今、開く音がした。



