「姫ちゃん!可愛いお名前ね。
“涼ちゃん”にこんな可愛いお友達がいるなんて知らなかった。」
近江涼介は家では“涼ちゃん”って呼ばれているの?
……そういえば夏祭りであった男も、“涼ちゃん”って呼んでいた。
「あの子高校生になってから、恥ずかしいからって何にも話してくれないんだもの。」
“恥ずかしいから話さない”って何?
“面倒臭いから”とかじゃなくて?
まるで別人のことみたいで、小さく首を捻る。
近江母は聞いてもいない我が子のことをペラペラ話す。
明るいだけが取り柄とか、スポーツ好きで勉強は苦手とか……
けれど、そのどれもが“近江涼介”に合致しない。
底知れない気持ち悪さに、愛想笑いと共に曖昧に頷いてひたすらお茶を消費した。
ふと、テレビ台の上に目が止まる。
近江涼介の成長過程を追う様に写真立てが並んでいた。
――これなら会話できそうだ。
心の中でひっそり安堵の息を吐いた。



