「涼ちゃんどうしたの?学校は?…ってあら?」
近江涼介だ。
その人物を見た瞬間そう思った。
性別は女だし、歳も全然上だけど。
あと顔立ちのバランスも近江涼介ほど完璧な比率ではないけれど。
黒いサラサラの髪とか、切れ長の目元とか、薄いのに整った顔の雰囲気とか、要所要所がよく似てる。
この人が母親なのだろうと、すぐわかった。
「熱があって帰ってきた。こっちは付き添い。」
近江涼介はフラフラと家の中に上がり込み、すぐそこの階段を上がっていく。
その途中で、一瞬手すりを握りしめて立ち止まった。
「……もう帰っていいから。“藤澤”。」
――いつもと違う呼び方。
その後ろ姿には、誰にも見せられない痛みが滲んでいる。



