9月も終わりに差し掛かる頃。
我が青藍高校では文化祭のお祭りムードが漂ってきていた。
え?1年生の頃はそんなイベントなかったって?
いや、あるにはあった。
ただ、特筆することがなかった。それだけだ。
「今年はうちのクラスはおにぎり屋さんやるんだって〜。楽しそうだよねぇ。」
静かないつもの教室で、話し合いに参加していたというのに他人事の様に榛名聖がのんびりと言った。
「おにぎりなら任せろ、得意料理だ。」
ふふん、と勝ち誇った様に広瀬真が笑う。
いや、おにぎりでそんなドヤ顔されても……
と思ったが、相手は料理音痴のびっくりバカだ。
おにぎりだって多分おにぎりではないものが出てくる気がする。
「私は絶対にアンタの作ったものだけは食べないからね!」
「んだと、握り飯だけならお前より上手い自信あるわ!」
「絶対嘘!それなら作り方言ってみなさいよ!」
「具入れて米を握る、以上終了だろうが!」
「それが不安!そのシンプルさが逆に不安!
握るって握りつぶすじゃないからね!?具だって何入れてもいいわけじゃないから!」
「んなこと知ってるわ!馬鹿にすんな!」
「今日も盛り上がってるねぇ〜⭐︎」
「……ケホッ。」
立ち上がって睨み合う私と広瀬真の真ん中で、近江涼介が咳をした……様な気がする。
音に気づいて下を見る頃にはいつもと同じ瞬きすら稀な無表情だったから、幻聴だった様にも思う。



