姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―


***

自販機の炭酸飲料のボタンを、怒りのままに拳で殴る。
自販機は怯えるように揺れて、何故だか2本も出してくれた。

機械に慰められたって、この気持ちは晴れやしない。

乱暴にプルタブを開けて1本目を一気に飲み干す。
奴らのせいで午前中ずっとイライラが治らなかった。


昨日“いつも通り”で解決したはずなのに。

でも!!でも…。

吊り上がっていた眉も目も口も、突然重力を失って垂れ下がる。

窓もなく薄暗い閉鎖的な自販機コーナーの、しんみりした雰囲気がそんな気持ちにさせてるのか。



「最近は、ちゃんと挨拶してくれてたじゃない……。」


今度は急に落ち込んできて俯く。

なんでこんな情緒不安定になってるの?私。


『なんでそんな顔になっちゃったのかな?』


迷子になった頭の中から、突然榛名聖の言葉が弾け出てきた。
他人事みたいなその問いに、表情筋がグンと重力を取り戻す。


――あんた達のせいでしょ?無視なんかするからじゃん。

結構やるなって褒めてきたくせに。
大丈夫かって心配してきたくせに。
いつもは笑いかけてくるくせに。

こんな時は無視って、ないよ。

ぐしゃり、空になった缶が私の手の中で潰れる。


(そうだ、私はガッカリしてる。寂しいって思ってる。)


心の奥の奥で囁くように呟く自分の声が聞こえて、驚いた。

寂しい?ガッカリ???

え、なんで?

今度は「なんでなんで」が頭の中で渦を巻く。

頭を抱えながら教室に戻ったら、男子達に心配されて私は促されるまま保健室のお世話になることになった。