姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―


海の時から兄ちゃんや近江涼介達に色目を全く使わないし、私に対しても彼らにするのと同じ態度で接してくる。

2人きりになってもその態度は変わらなくて、むしろ可愛がってくれている様な気さえする。
この人からは私に対する嫌悪やごますりを感じない。

だから気づけなかったんだ。

『鈍感人間』

数時間前に近江涼介に言われた言葉の意味に、ここで初めて気づく。

けどしょうがないじゃないか、有馬美咲は私の中で特殊な人間だったんだから。

「だから違うって言ってるじゃない。
兄ちゃんなんて熨斗つけてくれて……は、やらない、けど!」

特殊なペースに巻き込まれかけてうっかり傑兄ちゃんを差し出しそうになって、慌てて険しい表情を作り直す。

危ない、もしこれが有馬美咲の作戦だったとしたならコイツは相当な手だれだ。

思惑通りになってしまうところだった!

有馬美咲のことを半信半疑で警戒するのに、彼女はそれすらも笑って受け止める。

それが悔しくもあり恥ずかしくもあり、でもこの空気がなんとなく嫌ではない気がした。