身勝手なジャガイモ共は絶えず好き勝手言っている。
セピア色に翳る視界に、キラリとカメラのレンズが光ったのを捉え、咄嗟に腕で顔を覆った。
「やめ……」
「やめろ。」
低くドスの利いた声に、全員が黙った。
目の前に影ができたと思って腕をどかすと、よく知った背中が私の前に立ち塞がっている。
――近江涼介だ。
走ってきてくれたのか、珍しく肩が上下している。
その光景に、ものすごく安心して目が熱くなった。
途端にジャガイモ共の間に動揺が広がる。
「でも」とか「だって」とかモゴモゴと言っているけど、誰もキッパリと反論しようとはしない。
カメラを構えていた奴も、気まずそうにそっと持つ手を下げた。
近江涼介にはそのくらいの迫力があった。
「コイツがSNSに掲載されてようが有名人だろうが、
嫌がってることをしていい理由にはならないから。
これ以上しつこく騒いで付き纏うなら通報するぞ。」
怒気を纏った睨みと“通報”の一言で、ジャガイモ達は一気に青ざめお茶を濁しながら去っていった。



