姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―



「ひめちゃんだ!」
「本物!かわいすぎる〜!」
「握手してください!」
「友達になってー!」

捕まってしまわない様に、校門から数歩距離をとって立ち止まる。

興奮した奴らの言葉は騒音の様にいくつも重なって、何を言われているのかわからない。

これが好意なんだとしても、やっぱり私にとってはただの騒音にしか聞こえない。
熱い視線も前のめりに差し出された手も、つゆほど興味がない。

――だからこそ、ちゃんと向き合ってここで終わらせなくては。

決意した気持ちが変わらない内に、勢いよく頭を下げる。

唐突な私の行動に、騒いでいる連中はシンと静まり返った。

「ごめんなさい!騒がれるの好きじゃないです。
学校に集まるのも周囲に迷惑かかるのでやめてください。」

ちゃんと言えた……!

ぶりっこであしらうでもなく、ガン無視するでもない。
ちゃんと自分の言葉で嫌だ、と伝えられた。

心臓がドクドクと強めに脈打つ音が耳奥で響いている。

達成感と高揚感に包まれながらそっと頭を上げたのに、集団の反応は無情なものだった。