「ひめちゃんだ!」
「本物!かわいすぎる〜!」
「握手してください!」
「友達になってー!」
捕まってしまわない様に、校門から数歩距離をとって立ち止まる。
興奮した奴らの言葉は騒音の様にいくつも重なって、何を言われているのかわからない。
これが好意なんだとしても、やっぱり私にとってはただの騒音にしか聞こえない。
熱い視線も前のめりに差し出された手も、つゆほど興味がない。
――だからこそ、ちゃんと向き合ってここで終わらせなくては。
決意した気持ちが変わらない内に、勢いよく頭を下げる。
唐突な私の行動に、騒いでいる連中はシンと静まり返った。
「ごめんなさい!騒がれるの好きじゃないです。
学校に集まるのも周囲に迷惑かかるのでやめてください。」
ちゃんと言えた……!
ぶりっこであしらうでもなく、ガン無視するでもない。
ちゃんと自分の言葉で嫌だ、と伝えられた。
心臓がドクドクと強めに脈打つ音が耳奥で響いている。
達成感と高揚感に包まれながらそっと頭を上げたのに、集団の反応は無情なものだった。



