「そういや、聖は平気そうだよな。朝から囲まれてたけど。」
広瀬真が言った。
朝の私の疑問を、代わりに聞いてくれたのだろう。
それに対して、榛名聖はあっけらかんとした声で答えた。
「俺は適度になら騒がれるの嫌いじゃないから大丈夫かも〜。
あとさ、見てこれ。」
近江涼介と広瀬真に向かってスマホの画面を見せる。
そこにはいくつかの手紙やらプレゼントの包みやらを並べて移した画像が写っている。
「昨日もらったんだ〜。
今までこういうのくれる子っていなかったからわからなかったけどね?
俺のこと考えて書いたり選んだりしてくれたのかなって思ったら、ちょっと嬉しいよねぇ。」
そう言って、榛名聖はふわりと柔らかに笑ってみせる。
人の好意を素直に受け取って喜ぶなんて、以前の彼ならできなかったのではないだろうか?
「よかったな。」
榛名聖をまっすぐ見つめて、近江涼介が言った。
その言葉にも、榛名聖はくすぐったそうに笑みを深めて「うん」と頷いた。
(……そうか、あれは人の好意……。)
寝転がりながら、榛名聖の言葉を聞いてぼんやりとそんなことを考える。
今まで自分に寄ってくる奴らを、復讐に都合のいいアイテムや、うるさい雑音くらいの感覚で捉えてきた。
けれど、そう言えば奴らも人なのか。
――それならちゃんと、受け止めて向き合った方がいいのかもしれない。
そう思って、私はひとつ行動してみることにした。



