姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―


あれは一体何だったんだろう。

思い出している今も宇宙人に自分の記憶が改竄されているのではと疑いたくなるほどの違和感。

本人に聞きたくても「忘れろ」って言われているし。
誰かに相談したくても「忘れろ」って言われているし。

あの時の近江涼介が辛そうだっただけに、なかったことにするしか選択肢がない。

でも忘れられないし!

こうなったら別の衝撃で記憶を塗り替えるしかないって言うのに。

「あー、もう暇!何か起こってお願いだから――!」

突然叫んだ私の声に、広瀬真がビクッと揺れる。

――まあ心配しなくても、私が「暇」と思った時に事件は起こるものなのだ。


「あー!ひーちゃん、見て見て〜これ!」

榛名聖が驚いて目を丸くしながら私の前にスマホを差し出してきた。

その画面にはSNSのショート動画が流れている。
男女ペアっぽい足の映像から始まり、舐め上げるようにカメラが動く。

“イケてる街で見つけた”
“極上の美男美女コンビ♡”

と白地にピンクで縁取られたメルヘンな文字が、カメラの動きに合わせて浮かんでは消えていく。

そして最後に映ったのは、満面の笑顔で隣の男と腕を組む私と、仏頂面で女にしがみつかれている榛名聖のツーショットだった。