「で、なんで俺のとこに来るわけ?」
机の影に隠れるようにして傍で縮こまっている私に一瞥もくれず、近江涼介は読書に勤しむ。
「だって植木鉢だよ?!
金髪じゃ身代わりにしかなれないだろうし、榛名聖じゃ心許ないし……」
1番頼れそうな近江涼介と僅かな休憩時間でも行動を共にするのが、最も安全な気がする。
そう思ってわざわざ隣の隣のクラスまで避難してきたのだ。
「……なんで鞄抱えてんの?まだ授業残ってるけど。」
「ああこれ?教科書とか捨てられると困るから、自己防衛よ。」
近江涼介の無な目がスンと遠くなる。
「お前は何と戦ってんの?」
「陰湿ないじめとですけれども。」
教室内から近距離で痛い視線をぶつける女共に、犯人は誰だとばかりに睨みを利かせる。
近江涼介はやっと本を閉じたかと思えばため息を吐いてこちらへと向き直った。
「何が来ようと1人でぶっ飛ばすんじゃなかったっけ?」
「さすがに武器を用いての攻撃は遠慮したいんで。
近江涼介の側にいれば女子からの直接攻撃は避けられるしさー……」
真面目な顔で対策を説明していると、始業を告げるチャイムが鳴る。
「チャイム鳴ったぞ、教室帰れよ。」
冷たい声。あっという間にそっぽ向かれた。
まるで私なんか存在していないかのよう。
なんだよなんだよ、“自分は関係ありません”って?
無意識に目を尖らせて頬を膨らす。
胸にもやっとしたものが残る。嫌な感じだ。
「ごめんね、“近江くん”。もう頼らないから!」
特上のぶりっこスマイルをぶつけて踵を返す。
冷血漢なんか頼りにした私が馬鹿だった。
いいよもう、知らないっ!



