姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―


一方こちらは近江涼介の不可解な行動に、初めて人間に出くわした野良猫のようになっている。

(……いや!ここで何もしなかったら負ける!)

自分を奮い立たせて、勢い良くマシュマロを大口開けて一口で食べてやった。

勢い余って近江涼介の指まで噛んでしまったけど、そんなの敗北の前にはさしたる問題ではないのだ。

()って…。」

噛まれた指を見ながら眉を顰める近江涼介を、これでもかと睨みつけながらモグモグとマシュマロを咀嚼する。

甘くてふわふわした味が口いっぱいに広がって、忘れていた空腹を復活させた。


「あっれぇー!?“涼ちゃん”!?」

近江涼介にもっとお菓子を寄越せと迫る中、不意に人混みから一際大きい声がした。

近江涼介を“涼ちゃん”なんて呼ぶ奴は榛名聖くらいだけど、榛名聖の声ではない。

“涼ちゃん”と呼ぶ声に反応して人混みの方を見ると、高校生くらいの男子6人グループがこっちを見て立ち止まっていた。

――誰?

親しげに呼ぶ明るい声に、近江涼介の顔が凍りついた。