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人の波に流されて、気付けば来た方と反対側の出口に来てしまっていた。
あたりはポツポツ街灯がついているけどもうほとんど暗い。もうすぐ花火が上がる時間。
近江涼介によればこの先に河川敷があって、花火をそこで見たい人の波に巻き込まれた結果の今らしい。
しっかりと握っていた手は人混みを抜けてほとんど解けていたけれど、人差し指同士はなんとなく繋がったまま。
夏のぬるい風が私の頬を撫でていく。
通りの邪魔にならないように、神社の外壁に沿って私達は立ち止っている。
近江涼介は空いている片手でスマホを操作して、榛名聖と連絡をとってくれていた。
人混みが凄すぎて結局焼きそばは買えなかった。
食べたい気持ちはあったのに。
メッセージを打ち終わった近江涼介が、なんでもないような顔で明後日の方向を見る。
(……なんなんだこの時間は!)
こっそりと眉を顰めながら、私はずっと地面を見ている。
目を逸らしても合わせても、触れ合ったままの指を離しても、何かアクションをするだけで負けになる気がして微動だにできない。
(早く手を離してくれればいいのに…!)
気まずい緊張感にそんなことも思ってしまう。
なんの勝負をしているのかわからないけれど、とにかく私から何かをしたら負けるのだ。
「姫。」
長い沈黙を先に破ったのは近江涼介だった。



