姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―



周囲の賑やかな笑い声も、雑音のような途切れ途切れに飛び込んでくる他人の会話も。

聞こえていた音がまた少し遠くなる。


(ああ、手の感触に集中しているからか。)

そんなことを頭の片隅で冷静に考える。

私の手をすっぽり包み込むような、大きい手。
柔らかみはなくて、骨の感触が直に伝わる男子の手。

『お前、結構やるな。』


いつも私を励まして褒めてくれる、優しい手。


暑さのせいか熱くて少しだけしっとりした感触が伝わって、近江涼介が人間なのだと実感する。


そうやって近江涼介がちゃんと生きている人なのだと実感する度、何故か安心するんだ、私は。


後ろ姿でもわかる淡白で無な背中と、伝わる手の温度。
そのギャップにふわふわとした妙な気持ちになりながら、黙って人混みの中を歩いた。