「俺、売り上げ貢献できてないんで。功労者同士で行ってどうぞ。」
有馬美咲がちょっとだけ頬を染めて驚く中、近江涼介は退屈そうにあくびをして私達の元に帰ってきた。
「なんであげちゃったのよ!」
「…………。」
「まあまあ〜、ひーちゃん落ち着いて〜。」
「っとに、がめつい奴。」
ワイワイと盛り上がる中、残された傑兄ちゃんと有馬美咲は微妙な雰囲気で向き合っている。
「あー……えっと」
有馬美咲が気まずさに頬を掻く。
“チケットは妹に譲ろうか”
そう言おうとした時、傑が先に口を開いた。
「今月は忙しいから来月でいい?美咲が暇なのいつ?」
当たり前のように言った傑に、美咲の口元は密かに緩んできてしまう。
赤らんだ頬を日焼けのせいにして、美咲の恋がほんの少し報われたことに気付いていたのは、僅か数人だけだった。



