姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―

「すみませーん♡
今、向こうにある凪って海の家で使えるサービス券配ってて……よかったら一枚どうぞ♡」

ちょっと前屈みになって上目遣いで笑いかけながらチケットを手渡す。

胸の谷間なんてもちろん見せないけど、見えるかどうかのこの際どいラインが1番効くでしょ。


思惑通りにデレデレと鼻の下を伸ばしたジャガイモが、嬉しそうにチケットを受け取る。

ついでに周りにいた奴らも釣れて、「俺にも」「こっちも」とあっという間に人集りができた。


「ありがとうございまーす♡海の家凪、ぜひ行ってみてね♡」

私が持っていた分のチケットが全て捌ききってしまった。
海の家へと夢見心地で歩いて行くジャガイモ共を、気分良く手を振り見送る。


「私が本気になればこんなもんよ!」

ふふん、と笑って胸を張り腰に手を当て仁王立ちで得意満面のポージング。

広瀬真はさぞ悔しがっているだろうと思ったら、不機嫌を全面に出した仏頂面。


っていうか、なんか怒ってる?


さっきから広瀬真の情緒がわけわからない。

ピリピリしたオーラに咄嗟にファインディングポーズをとってとりあえず応戦の意を示す。

そうこうしている間に広瀬真は着ていたラッシュガードを脱ぎながらズカズカと歩いてこっちに近づいてきた。

「ちょっと!殴り合いはさすがに嫌だからね!?」

迫り来る広瀬真の剣幕に身の危険を感じて慌てふためく。

パンチが届く距離まで迫られて両腕で顔をガードすると、ふわり、上半身が何かに包まれた。