榛名聖と広瀬真の喧嘩からしばらく時が過ぎ、季節は夏へと移り変わった。
喧嘩のあとの奴らは随分さっぱりしたもんだ。
何事もなかったかのようにいつも通りの日常を過ごしている。
今は夏休み前のテスト期間。
旧校舎のいつもの教室で丸テーブルに勉強道具を広げて4人で座っていた。
ただ、ちょっぴり変化はある。
それが何かというと……
静かな室内に軽快な通知音が響く。
榛名聖のポケットから鳴ったようだ。
「ひーちゃん、今日の夕飯はチキン南蛮だって。
ひーちゃん家行っていい〜?」
受信したメッセージを見ながら榛名聖が言った。
「え、やだよ。渉兄ちゃんのチキン南蛮って超おいしいんだから。
私の取り分減らしたくない。」
「え〜、でもたくさん仕込んだからって渉さん言ってるよ?ほらぁ。」
榛名聖が上体を私の方に傾け、スマホの画面を見せてくる。
真偽を疑うように私も榛名聖の方へ寄ると、その画面を確認した。
名前欄には“藤澤 渉”の文字。
メッセージは渉兄ちゃんからの“たくさん仕込んだんだよね”の言葉と、証拠の画像が表示されている。
ふむ、どうやら嘘ではないらしい。
「こんだけあるならしょうがないな、許す。」
「わぁい、やった〜⭐︎」
「待て待て待て待て。」
勉強に集中していたはずの広瀬真が口を挟んできた。



