「なんっでお前がここにいるんだよッ!」
「金髪うるさい。小っさい犬みたい。」
窓辺の観葉植物の水やりをしている私を指差して、金髪はぎゃんぎゃんと吠える。
一瞥もくれずに一刀両断したら、余計うるさく喚いてきた。
ここは旧校舎、2階。最奥の空き教室。
私が足蹴にされた忌まわしきあの場所だ。
「まあいいじゃないのまーくん。
あ、藤澤ちゃん水遣りありがと~。」
「……別に、このくらい。」
榛名聖が差し出した手に、空になったジョウロを渡す。
その様子を見ていた金髪が、偉そうな態度で鼻を鳴らした。
「…まあ、あの気持ちわりぃ喋り方しなくなっただけいいけどな!」
「え~金髪うるさい♡」
「やっぱこいつ今すぐ追い出せえええ!」
「……わぁ、なんか賑やかになっちゃったねぇ。」
私に掴みかかろうとする金髪を榛名聖が押さえつけて「まぁまぁ〜」と宥めている。
その間に喧騒も我関せずと言った調子でソファを陣取り読書に勤しむ近江涼介に、私は静かににじり寄る。
背凭れの辺りまで来ても、気付いてないのかシカトなのか、近江涼介は微動だにしない。
さらっさらの黒髪だけが、ひと束流れたぐらいだ。
「あり、…がとう、ね!」
つむじに向かってお礼を言うのも変な感じだけど。
面と向かってよりやりやすいか。
『お前、結構やるな』
――なんでだかわからないけど、嬉しかったから。
ちょっと気恥ずかしくて、下唇を噛んで返事を待つ。
ゆっくりと力強くて、何処か気怠げな双眸が私を捉えた。
「――なんだって?」
「ちゃんと聞いとけよ。」



