姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―


「いじめられてたから復讐って…
相当性格歪んでるな。」

「アンタにだけは言われたくない。」

それ、今言う?
もっと他に言うことあったでしょ。

人を足蹴にしておいて、性悪扱いとは心外だ。

ギリリと睨んで近江涼介の顔を見上げれば、相変わらずの無表情。

(全く気にしてませんってか。)

やれやれ、奴は何事にも動じない冷血漢だよ。
表情も作れないロボットかなんかだよ。

「もういいや」と呆れた息を吐きながら視線を逸らしたけど、近江涼介は私を見たまま。
私を映す生気の薄い目の奥に、形容し難い何かが滲んでいる。

刹那、手首から離れ浮いたその手が予告なしに私の髪をぐしゃりと乱す。

「!」

顔に落ちてきた後ろ髪の隙間から見た近江涼介の表情に驚いた。

「お前、結構やるな。」

薄ら、本当に微かだけど。
その目と口許に、笑みを湛えている。

スッと耳に届いた言葉に、思わず大きく開いた目がほんの少しだけ熱くなる。
私の血液が全身にじんわりと温かく巡っていくような気がした。