姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―



一息ついて姫と真がテーブルを囲んでティータイムを楽しむ傍らで、聖はソファに座る涼介の背後に立つ。

背もたれに両肘をつき顔を寄せると、未だ本に夢中を装う端正な横顔の方を向いた。


「涼ちゃんも、ごめんね。今まで。」


何が、と言わなくても涼介ならわかっているような気がして、後の反応を待っている。

「別にいいけど。自分でも“そう”思うし。」


やっぱり自分が彼をどう見ていたか気づいていた。


涼介の読心術並みの観察眼に、聖は畏怖すら覚えて小さく喉を鳴らす。

「聖が自分の本音に気づけたんならそれでいい。
そもそも俺達は喧嘩してないし、謝る必要もない。」

涼介は持っていた本を静かに閉じ、淡々とそう言った。

そして、この話はこれで終わりとでも言うように立ち上がると賑やかなテーブルの方へと移動する。


「近江涼介!ちょっと聞いてよ、このバカが…」

「うるせーブス!大体お前がなぁ……」

近江涼介が席に着き、一層騒がしくなった場所を、榛名聖はぼんやりと見つめる。


「ちょっと榛名聖!アンタも早く来なさいよ!」

「そうだぞ聖!このうるせー奴の相手俺1人じゃやってらんねーよ。」

「…だってさ、聖。」

榛名聖にとって騒がしくてぬるいこの場所が、今は温かいと感じる。

榛名聖は「敵わないな」と小さく呟き、賑やかな輪の中へと入っていった。