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――side.榛名聖
「聖くん……だっけ?いっぱい食べてってね。」
そう広くはないリビングの一角で、藤澤兄妹と俺はダイニングテーブルを囲んで座っている。
さっきの電話で渉さんが俺を夕飯に誘ったからだ。
テーブルの上には大皿に山盛りの唐揚げと、1人ずつのご飯と味噌汁、付け合わせのサラダが並ぶ。
作ったのは、ガタイのいい体に似合わない淡い水色のエプロンをつけて愛想よくニコニコしている渉さん。
……本当に意外だ。
「感謝しろよ聖!兄貴の手料理はそこらの下手なレストランのより旨いんだからな!」
傑さんが茶碗片手に唐揚げで頬を膨らませ、箸で俺を指さした。
「ちょっと傑兄ちゃん、行儀悪い!」
「姫に怒られたぁ!怒った顔も世界一可愛いけどネ♡」
兄妹でワイワイ賑やかしくしている食卓。
――暖かい、ずっと欲しかった光景。
そう思うほど、ひとりぼっちの冷たい家を思い出してポツンと取り残された気持ちになる。
その戸惑いを隣に座る渉さんは見逃さなかった。



