姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―



「ふぅん……じゃあいつも榛名聖は怒ってるんだ?」

平静を装っている瞳が、少し揺らいだのを見逃さなかった。

「あ、怒ってるってより、悲しい、かな?
いつも悲しい気持ちなの?」

榛名聖の唇から、ギリと不穏な音がする。
言い切るより少し早く、強く手首を掴まれた。

「……痛いよ、離して。」

図星だったか。

握る手に更に力が入って、指が肌に食い込んでいく。

ちょっと痛い。
痛い、けど――

「もう黙って。」

絞り出すような声が落ちてくる。
下を向いた榛名聖の表情が垣間見えた。

眉根を思い切り寄せて歯を食いしばった苦しそうな顔。
やっぱり、榛名聖の方が痛そうだ。

喉の奥がキュッと締まる。
だから、榛名聖を見つめる目に力を込めた。

「……黙らないよ、友達だから。
怒ってるなら宥めたいし、悲しいなら助けたい。」

「黙れって!お前に何がわかるんだよ!」

道のど真ん中で、ビリリと痺れた大きな声に、周囲が一瞬静まり返る。



「……場所、変えよ。」

強く握られた手首をそのままに、俯く榛名聖を引き連れ私達はただ黙って歩き出した。