「ふぅん……じゃあいつも榛名聖は怒ってるんだ?」
平静を装っている瞳が、少し揺らいだのを見逃さなかった。
「あ、怒ってるってより、悲しい、かな?
いつも悲しい気持ちなの?」
榛名聖の唇から、ギリと不穏な音がする。
言い切るより少し早く、強く手首を掴まれた。
「……痛いよ、離して。」
図星だったか。
握る手に更に力が入って、指が肌に食い込んでいく。
ちょっと痛い。
痛い、けど――
「もう黙って。」
絞り出すような声が落ちてくる。
下を向いた榛名聖の表情が垣間見えた。
眉根を思い切り寄せて歯を食いしばった苦しそうな顔。
やっぱり、榛名聖の方が痛そうだ。
喉の奥がキュッと締まる。
だから、榛名聖を見つめる目に力を込めた。
「……黙らないよ、友達だから。
怒ってるなら宥めたいし、悲しいなら助けたい。」
「黙れって!お前に何がわかるんだよ!」
道のど真ん中で、ビリリと痺れた大きな声に、周囲が一瞬静まり返る。
「……場所、変えよ。」
強く握られた手首をそのままに、俯く榛名聖を引き連れ私達はただ黙って歩き出した。



