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中学3年生になった時、あるパーティーでこんな噂を耳にした。
“広瀬真が一般家庭の子が受験するような高校へ外部進学するらしい”
……意味がわからなかった。
確か彼の学校は、幼稚舎からの大学までのエスカレーター式。
しかも広瀬の力があれば自動的に大学卒業まで悠々自適に進級していけるはずなのに。
「真くん!」
数年ぶりに呼び止めた俺の声に、友達との談笑をやめて真くんは振り返る。
真くんの取り巻きたちは、俺の登場に少し気まずそうにしている。
それなのに、彼は嫌な顔ひとつせずその輪から抜けてこっちへと歩いてきた。
「何?」
鮮やかな色のドリンクが入ったグラスを側のテーブルに置いて、真くんが俺を見て話を聞く姿勢を示す。
久しぶりに話す真くんは、また雰囲気が変わっていた。
「高校、外部受験するんだって?」
「そうだけど?」
気の強そうな真っ直ぐな目。堂々とした佇まい。
まだ髪こそ黒いけど、“今のまーくん”はこの時すでに出来上がっていたと思う。



