淡いピンクの着物を着た真くんの母親が、何かに気づいたようにそっと真くんのネクタイに手をかける。
恐らくネクタイが曲がっていたのだろう。
母親に触れられたことでそれに気づいた真くんが、恥ずかしそうに気まずくそっぽを向いている。
ネクタイを直し終わり、母親がそっと手を離しネクタイから真くんの顔へと視線を移す。
恥ずかしそうに唇を尖らせ何かを言っている真くん。
それに対して、片眉を下げて愛おしそうに我が子に向かって笑いかける彼の母親。
彼はちゃんと愛されている。
その光景を見た瞬間、視界が真っ暗になったような気がした。
――どうして気づかなかったんだろう?
厳しさは愛情の裏返しだって。
僕より下だって思っていた奴が、僕が欲しくてたまらないものを持っていた。
“同じ”だと思っていたのに。
持っていないのは僕だけじゃなかったと、とても安心していたのに!
裏切った。
人生2度目の足元が崩れて壊れていく感覚。
「聖くん、今日はご招待ありがとう。
お母様にもぜひご挨拶とお祝いを…」
いつのまにか使用人に案内されていた真くんが、嬉しそうにソワソワしながら僕の前に立っている。
目の前で笑う真くんがとても幸せそうに見えて、心がズブズブと暗い水底に沈んでいく。
僕の世界がまた真っ黒に塗り潰された。
――ズルい。
憎しみにも似た感情を隠すために、ゆっくりと唇に弧を描く。
「………ああ、うん。ぜひ楽しんで行って?」
それっきり。
この後も何度か真くんと顔を合わせることになるんだけど、一言も言葉を交わすことは無くなった。
恐らくネクタイが曲がっていたのだろう。
母親に触れられたことでそれに気づいた真くんが、恥ずかしそうに気まずくそっぽを向いている。
ネクタイを直し終わり、母親がそっと手を離しネクタイから真くんの顔へと視線を移す。
恥ずかしそうに唇を尖らせ何かを言っている真くん。
それに対して、片眉を下げて愛おしそうに我が子に向かって笑いかける彼の母親。
彼はちゃんと愛されている。
その光景を見た瞬間、視界が真っ暗になったような気がした。
――どうして気づかなかったんだろう?
厳しさは愛情の裏返しだって。
僕より下だって思っていた奴が、僕が欲しくてたまらないものを持っていた。
“同じ”だと思っていたのに。
持っていないのは僕だけじゃなかったと、とても安心していたのに!
裏切った。
人生2度目の足元が崩れて壊れていく感覚。
「聖くん、今日はご招待ありがとう。
お母様にもぜひご挨拶とお祝いを…」
いつのまにか使用人に案内されていた真くんが、嬉しそうにソワソワしながら僕の前に立っている。
目の前で笑う真くんがとても幸せそうに見えて、心がズブズブと暗い水底に沈んでいく。
僕の世界がまた真っ黒に塗り潰された。
――ズルい。
憎しみにも似た感情を隠すために、ゆっくりと唇に弧を描く。
「………ああ、うん。ぜひ楽しんで行って?」
それっきり。
この後も何度か真くんと顔を合わせることになるんだけど、一言も言葉を交わすことは無くなった。



