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そしてその日はやって来た。
それは桜が散って新芽が顔を出し始めた春のこと。
山の上の絢爛豪華な別荘の一室で、母親は今日も見栄を張るのに忙しい。
鏡を見てメイクを直したり、高価なアクセサリーをつけたり外したりして自分を飾っている。
「聖。
――そのネクタイ、センス悪いから変えて。」
「――うん、ごめんね。お母さん。」
僕のことを見もしない淡白に指示に、素直に頷く。
この人がなぜ俺の周りの人を呼んでパーティーをするのかといえば、答えは明白。
自分より格下の人達相手なら好きなだけチヤホヤしてもらえるからだ。
だから「“広瀬”を呼べる私」と言う付加価値をプレゼントしてあげた。
――例え“利用”でも必要とされていることに安心する。
そんな自分が嫌になる。
溜め息を吐いて、ふと窓の外を見る。
パーティーの時間より少し早めに、山道を黒塗りの車が登ってくるのが見えた。
その車はあっという間に別荘の敷地内に辿り着いて停車する。ハイヤーが恭しく開けたドアから、真くんとその母親が降りてきた。
(まだ少し時間も早いのに。)
2人もそれはわかっているのか、車から降りた後もしばらくそこに立っている。
出迎えようか、誰かに声をかけて中に通させようか――
そう思った時だった。



