人気のない物陰で俺と“真くん”は並んで壁に凭れ掛かっている。
さっきまで賑やかな声や音楽が溢れていたのに、防音扉で隔たれたここは驚くほど静かだ。
「学校はどこ?」
「友達は?」
「普段何して遊んでる?」
会話は僕の一方的な質問ばかり。
それに真くんは辿々しく答えている。
「あ……えと、休みはなくて、ずっと習い事……。」
言いかけて、顔が曇る。
“マズイことを言った”――そんな風に視線を泳がせている。
「習い事!?ずっと!?一日中!?」
「あ……、うん、でも、たまに休んだりも……。」
「へぇ、すごいなぁ。僕なんてさぁ……」
ふと見た真くんの目が、丸くなって輝く。
唇は吊り上がるのを堪えて、ふにゃふにゃと動いていた。
(――この程度の褒め言葉で喜ぶの?)
鮮烈な衝撃。
厳しい親は、彼を愛してはいない。
友達もいない。
遊ぶことは愚か些細な自由もない。
――なんでも持っていると思っていた奴が、
何も持っていなかった。
胸に落ちた白い雫が波紋を広げて、鼓動がどんどん早くなる。
話をしながら、口元がニヤつくのを抑えることができない。
湧き上がる親近感と、強烈な優越感。
孤独なのは僕だけじゃない。
もっと可哀想な奴がいる。
――あの日の感動を、俺はずっと忘れない。



