後に、俺が“家”だと思っていた場所は、榛名の本家の敷地内にある別邸だったことを知った。
どうりで同じ兄弟であるはずの兄達とは、生活の中でロクに顔を合わせたことがないわけだ。
大企業の社長をしている父親は、仕事人間で子育てにはほぼ関わらない。
だから跡取りでもなんでもない俺にはつゆほどの興味も示さなかった。
――そもそも夫婦仲が冷え切っていたらしいから、この人と俺は親子なのかも怪しい。
月に何度かは兄達に会いに来るくせに、俺ところには1度も来ないあたり、多分そうなんだろう。
元々しがない女優崩れの母親は、自分のことが大好きで、贅沢三昧し放題。常に女であることを求める自由人。
兄達は適度に可愛がっていたけど、4人目の俺には関心がない。
女の子を望んでたのに男だったからとか、俺の本当の父親に手ひどく振られたからだとか、理由はまぁ――諸説ある。
これら全部、別邸内のハウスキーパーやシッター達の噂話で知ったこと。
この人達も俺の前では俺に愛情を持っているフリをしてるだけ。
裏では俺を“お金持ちの家の子だけど愛情をもらえない可哀想な子”と笑っていたことを知っている。
誰からも必要とされない、透明な存在――
これは、俺の真っ黒で孤独な世界の話だ。



