翌日の昼休み。
席を立とうとする榛名聖の前に立ちはだかり、奴の机に片手をついて凄んで見せる。
「ちょっと面貸しなさいよ。」
「えー、何?怖いなぁ。」
ヘラヘラ笑う顔に緊張感はまるでない。
後ろの広瀬真は困惑顔。
遠くの席の近江涼介はうんざりしている。
クラスメイト達が何事かとざわつく中、私は人気のない屋上前の踊り場に榛名聖を連れ込んだ。
「で、どうしたの?こんなところに連れ込んで。
また変な噂立っちゃうよ〜?」
真面目な顔をしている私と対峙して、真逆の態度で笑顔を崩さない榛名聖。
意味深に視線を階段下に移すと、聞き耳を立てていた野次馬が慌てて走り去る音がした。
「茶化さないで!
理由はわかってるでしょーに。」
「まーくんとのことでしょ〜?
言っとくけど謝る気ないよ〜、俺。」
口調も態度も脱力しきっている。
その割に、謝る気はないと言う主張には確固たる意志を感じた。
「別に謝るかどうかは榛名聖が決めることでしょ。
私は指図する気ないわよ。
――そうじゃなくて、私、アンタに言いたいことがあるの。」
榛名聖は緩く口元に弧を描いたまま、やれやれと肩を竦める。
ただ、茶化すことはしないから話を続けた。
「近江涼介から聞いた!榛名聖のことも広瀬真のことも。
――私もね、榛名聖の気持ちちょっとわかるところがあるの。
でもそれってさ、広瀬真も一緒……ッ!」
ガツン。
話を遮るように、私の頭上で壁に拳を叩きつける音がした。
反射的に閉じてしまった目をそっと開けると、榛名聖が間近に迫って肘をつき影を作っている。
ひやり、コンクリートの冷たさが背中に伝わる。
見上げたその表情は、笑っているけど目に光がなくて、冷たくて、怖い。
「――家族にぬくぬく甘やかされて育ってきた奴に、俺の気持ちの何がわかるっていうの?」
いつもの間延びした喋り方からは想像できない、低く冷たい声。
榛名聖は怒っている。それも、ものすごく。



