今日も今日とて清楚で可憐、完璧な美少女の武装。
世界が私を嫌うなら、1人で立ち向かってやる。
私は絶対泣いたりしない。
放課後、人気のない高校の図書室。
洗練された知的で静かな空間に、全くそぐわない愛らしい高音が響く。
「すごい♡会長ってなんでも知ってるんですね♡」
丸く大きな瞳を線になる程細めて柔らかに微笑んで見せれば、インテリメガネの堅物生徒会長の頬が赤らむ。
極め付けに手の一つでも握れば、ほら――私に落ちた音がする。
――見てましたか?生徒役員女子の皆さん♡
真面目そうな見た目の女共が、本棚の影で悔しそうにこっちを見ているのを盗み見て胸がスッとする。
男なんてどうでもいい。ジャガイモみたいなもん。
私が世界で1番嫌いなのは――女。
私、こと藤澤 姫は16年前にこの世に生を受けた。
“姫”なんて名前に負けない容姿を携えて。
肩ほどまで伸びた天使の輪っかが輝くゆるふわの黒髪。
長いまつ毛に大きな目、小さな唇、華奢な身体……
美少女の条件を全て満たす私の人生には、常に女の嫉妬が付き纏った。
『姫ちゃんっておとこのこといるほうがたのしいんでしょ〜?』
そう言って物心ついた時から幾度となく女にハブられた。
「そんなこと思ってないのにどうして?」
嫉妬も自分が恵まれた容姿であることも知らない、純粋なあの頃の私には仲間はずれの理由が全く分からなかった。



