「円は普段メイクしないし、絶対使わないでしょ!
ねー、姫ちゃ〜ん。私のリップ選んでよぉ。」
私の至近距離でパンッと音を鳴らして手を合わせて、“お願い”ポーズで騒ぐ前髪パッツン。
いつの間にかその背後に隠れた地味メガネの口元が、小さく“そうだよね”と動く。
――残念そうに笑ってリップを棚に戻したのを見てしまった。
……なんだかずっとモヤモヤする。
3人に気づかれない様にひっそりとため息をつく。
終始キラキラとしている視界に疲弊して目を伏せる。
頭に思い浮かぶのは旧校舎で近江涼介達と過ごす光景。
早く話したい。今日のこと。
味は甘ったるくてよくわからないけど、
見た目が可愛いスイーツ食べたこととか、
ブッサイクなマスコットがいたこととか、
言葉にできないモヤモヤも、全部、全部!
だから、それに勇気づけられる。
――確かめよう、これが私の求めたものなのか。



