姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―


***

電車に乗って降り立った街は、若者で溢れかえっている。

私達と同じ様に制服を着たグループもいれば、派手な私服や個性的な格好をしている人もいて、うるさいほどに賑やかだ。


「とりあえず何するー?」

「プリクラはマストっしょ!姫ちゃんと撮るんだ〜。」


人が行き交う道を、前髪パッツンとユルケバ、地味メガネと私のペアで歩く。

人に歩調を合わせることに慣れてないのに、人混みを抜けることもしなくちゃいけなくてちょっと大変だ。

前を歩く前髪パッツンとユルケバのコンビは、後ろを振り返ることなくスイスイと人混みを避けて歩いていく。

地味メガネはちょっと鈍臭くて人を避けようとするたび何度かお見合いして、そのせいで前との距離がどんどん開いていく。

「大丈夫?」

その鈍臭さで。
――という余計な一言は飲み込んで、気遣っている風に笑ってみた。

「だっ……大丈夫大丈夫……。」

地味メガネも恥ずかしそうに苦笑いする。
変なタイミングで立ち止まるから、また人にぶつかりそうになっている。

地味メガネの青白い肌は幽霊を思わせて、通行人にぶつかられまくってることを妙に納得した。


「私が前歩くから、着いてきて?
なんならこれ、掴んで?置いてかれちゃってるし……。」

内心呆れてる。けど、猫は被る。

人差し指だけを差し出す。
地味メガネは少し驚いたが、控えめに私の指を掴んで握る。

ふにゃりと細く柔らかい、初めて触れた女の子の感触。


(……なんで私がこんなこと。)

頼りない手を引いて、2人並んで人混みを掻き分けて歩く。
アスファルトが日を照り返す、ジリジリとした熱が焦ったい。


「藤澤さんって思ってたより優しいんだね。
……あっ!えっと、優しくないって言いたかったわけじゃなくて!」


(なにそれ?褒めてるつもり?)


優しいのは猫被ってるんだから当たり前だし。

広瀬真が同じことをやったとしたら、多分ズタボロ言って喧嘩が始まっているし。


全然嬉しくない、けど。

地味メガネの眉尻が下がる困った様な笑顔が頭に残って、なんとも言えない気持ちになった。