姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―


***

「なーんか楽しそうだね〜。まーくん達。」

涼介の傍らで、2人の様子を見ながら聖が言った。

「ところでさ。新学期の騒ぎの原因、ひーちゃんにも当てはまることが一つあるんだけど〜……言っていい?」


深く椅子に凭れ、ずっと本に視線を落としたままの涼介の顔が初めて聖の方を向く。
関心を向けられ、聖は満足そうに笑みを深めた。

「“親しみやすくなったから”だって。」

涼介の目はずっと聖を見つめたまま。
驚く様子もなく、表情はピクリとも変わらない。

「ひーちゃんってさ、元々高嶺の花扱いされてたらしいんだよね。愛想はいいけど、いっつも同じ様な笑顔貼り付けててさ。」


「本人に言ったら調子に乗りそうだけど」と言いながら、聖は姫の方を見る。
相変わらず真との会話に夢中で、こちらに注意すら向けていない様だ。

「それが最近になって、本人は上手く取り繕ってるつもりだけど言動がかなりコミカル…豊かになったじゃない?
表情もくるくる変わる様になったし。
それで頑張れば手が届くかもって思われちゃったみたいなんだよねぇ。

俺達がひーちゃんを変えちゃったってコト。」


聖はさりげなく涼介の反応を伺いながら話をする。
自分が発した言葉に、彼は何を言うのだろうか……試そうとする意図がその目の奥に潜んでいる。


「“変わった”ワケじゃない。」

聖が落とした波紋を鎮めるような、芯のある呟き。

――そしてまた、涼介の視線が本へと落ちる。


「言動が忙しい今の姿はアイツの元々の姿だろ。」


作り物みたいに綺麗で、感情が欠落した横顔を聖は静かに見ている。

「……あぁ、でも。」

涼介少し目が開いて、閃きの色が差す。
じわりと浮き出した感情の色に、余裕顔の聖の指先がピクリと動いた。

「分厚いメッキがどんどん剥がれていってるって意味では、変化してるのか。」

涼介が可笑しそうに息を漏らし、優しく双眸を細める。
その目は、出会った頃よりずいぶん表情が柔らかくなった姫のことを捉えている。


――聖の心に“また”ヒビが入った音がする。


温度を纏うようになった涼介の変化に、聖は落胆のような気持ちを潜ませ軽薄に笑った。


「涼ちゃん“は”変わったよね。」