姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―


「……あはっ。ちょっとぼーっとしてた!

そういえば、近江涼介って年上にはちゃんとするのかと思ってたけど違うのね。兄ちゃん達にはまともな受け答えしてたのに。」

取り繕うように早口で捲し立てる。


……何焦ってんだろ?


言い終わった後ちょっとの間沈黙が流れたから、ガッカリした。


「別に?俺はいつもあんなもんだけど。」

近江涼介は未だまっすぐ私を見つめている。
だから私も見つめ返す。

「姫の家族だから礼儀正しくしてただけ。」


――“私”の家族だから、ちゃんと接してくれてたってこと?


浮かれた喧騒がわっと一際大きくなって私の耳に戻ってくる。

参道に立ち並ぶ屋台の色が目に眩しくて、途端に景色が鮮やかに変わった。


そうだった。
私にだって、“私”を見てくれる友達がいたんだった。


「あは、えっへへー…。」

自然に笑みが溢れだす。たぶん相当ニヤけている。

「なに、気持ち悪。」

「はぁあ!?私の笑顔は100万ドルの夜景より美しいから!」

友達連れや家族連れ、カップルなんかが行き交う道を、私と近江涼介も並んで仲良く歩いて行った。