姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―


「あー。でも出かけたりはしたか、お前らと。
後トランプしたりとか――……。」

斜め上を向いた広瀬真が指折り数え始める。

言いながら、口元は緩く弧を描いて最後は大きなあくびが出てきた。


ちょっと眠くなってきているのだろうか?
それが私にも移り、ほわ、と欠伸をする。

聞き役なのも相まって、だんだん眠くなってきた。


「楽しくてよかったじゃない。感謝しなさいよ、私に。」

「なんでテメーに感謝すんだよ。
友達いなかったのお前もだろ。お前が感謝しろ、俺らに。」

2人同時に瞼を擦って、ちょっとふわふわした心地になる。

だからだ。ガラにもないことを口走ったのは。


「してるわよ、感謝。
だって初めてできた友達だもん。」


カクンと揺れる頭が広瀬真の肩に傾きかけて、また戻る。

微睡の中で夢見心地。にへら、と口角が緩んだ。


広瀬真はそれを見て少し驚いたように目を見開く。
胸でトクンと何かが疼いた。


「……ふぅん。」

“何か”にはまだ気づかない。だけど確実に胸に積み上げられていく。

今にも目が閉じそうな私を見つめて、広瀬真はくすぐったそうに片眉を下げて笑った。


――今日も結局騒がしい1日だった。

……けど、3人の“内側”を、ちょーっとだけ見てしまった気がする……。

そこからはもう、2人して夢の中。
このことももう、起きたら多分忘れている。

――――――
――……

「おはよ〜、ひーちゃんまーくん。昨日はお楽しみだったようで〜⭐︎」

緩いのに高らかな声に、一瞬で覚醒して目が覚める。

大きな窓から雪面に反射した朝日がキラキラと差し込んでいる。


ガバッと勢いよく体を起こすと、私に凭れかかっていたらしい広瀬真の上体がソファの下に崩れ落ちた。


「痛ってぇ……、何?もう朝?」

気怠く目を擦りながら、状況をわかっていないバカが呑気に目覚める。

ソファの背もたれ側から私たちを覗き込むにこやかな榛名聖と無表情の近江涼介に、私は思い切り顔を歪めた。


「もう、人の家でイチャイチャとかやめてよね〜?節度は守ってもらわないとぉ。」

「渉さんに通報だな。」

「ちちちちがーう!!
だから渉兄ちゃんには絶っっ対言わないで!!!
ってか起きろ、広瀬真!!私の純情返せ!!!」

近江涼介に縋り付いて取り出したスマホを取り上げ、まだ寝ぼけている大馬鹿者の肩を掴んで大きく揺さぶり起こす。

今日も元気なお姫様と王子共。
そして朝から私の叫び声が響く。


「もう、またこのオチーーーーー!?」