深夜。みんなが寝静まった頃。
1人1つ与えられた部屋を抜け出し、私は1人で廊下を歩いていた。
慣れない大騒ぎのせいだろうか、なんだか目が冴えてしまった。
静かな空間にスリッパの擦る音が反響する。
進む度等間隔に並ぶ足元灯がぽっと点灯していくのが幻想的だ。
リビングのドアを開ける。カチャリ、消しきれなかった音が響いた。
「誰……!?――ってなんだ、姫か。」
ソファに座るぼんやりとした影が、驚いたようにこちらに振り向く。
そして私の姿を視認して安堵の息を漏らした。
「広瀬真!……アンタも起きてたの?」
私も一瞬驚いた。
けど、知っている声と暗闇でもなんとなくわかる金髪に安堵して近づく。
リビングの暖房はついたままだったようで、暖かい。
慎重に暗い中を歩きながらソファの前まで辿り着くと、そのまま広瀬真の隣に座った。
「んー、なんか途中で目ぇ覚めて。人ん家泊まるの初めてだからかも。」
「え、お泊まり初めてなんて今まで友達いなかったの?カワイソー。」
「お前は憎まれ口しか言わねぇな?」
いつもなら戦闘開始のゴングが鳴るところだが、今の広瀬真にその気力はないらしい。
言った通り目覚めて間もないのだろう、若干寝起きのような半目に掠れ声。
普段セットして立たせている髪も、大人しくしおれてマッシュヘアになっていて、ちょっぴり別人みたいだ。
「ってか、こんな風に遊んだり、テレビ見たりすんのも初めてだな。ウチそういうの全部禁止されてたし。」
今はついていない大画面テレビをぼんやり見つめながら、広瀬真は溜め息をつく。
表情に力がなく、虚無感が浮かぶその顔を見つめる。
いつぞやの広瀬家の厳しい父親を思い出して、妙に納得して頷いた。



