姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―


「…………。変なとこ見られちゃったかなぁ?」

赤く腫れてきた頬をそのままに、ニコリと穏やかに微笑んで見せる。

大丈夫、平気だ。
いつも通り可愛く笑うこともできるし。

近江涼介はまだ私をじっと見ている。
何を考えているのかわからない、そのクセこっちを見透かす切れ長の鋭い目で。

「お前、」

小さいのに脳に直接響く様な声音にドキッとする。
だから表情が崩れない様に注意を払った。


「あんな一方的にやられて、悔しくないの?」


ドクンと大きく鼓動した心臓がキンと張り詰める。



「――悔しい?どうして?」


僅かに声が震えてしまった気がする。
ちゃんと笑っているはずなのに、自信がない。心が凍って冷えている。

無意識に握りしめていた拳を、近江涼介の視線が捉える。

「……ふーん、あっそ。」

それだけ言って、近江涼介は姿を消す。
無機質で無関心な淡々とした声が、雑木林の中に溶けていった。